不安は、止まれのサインじゃない。
未来に踏み出す“エネルギーの揺れ”かもしれない。
🌱 理由もなくソワソワする夜
夜、ベッドに入っても眠れない。
特別、悪いことがあったわけじゃない。仕事も、家庭も、いつも通り。でも、心がざわざわする。なんとなく不安。なんとなく落ち着かない。「何かが違う」という感覚だけが、胸の奥にある。
以前の私は、そんな「理由のない不安」に、ただ戸惑っていました。
「なんで不安なんだろう」「何が心配なんだろう」。理由を探しても、見つからない。すると、「理由もないのに不安になるなんて、おかしいんじゃないか」と、自分を責めてしまう。
自己啓発本には、「不安を取り除こう」「ポジティブに考えよう」と書いてある。でも、どうやって?理由がわからない不安を、どうやって消せばいいの?
そして、消そうとすればするほど、不安は大きくなる。夜、眠れない日が続く。日中も、なんとなく心が重い。「このまま、ずっとこうなんだろうか」。そんな不安が、また不安を生む。
でも、ある日、カウンセラーの友人に相談したとき、こう言われました。
「それって、次のステージに進む前のサインかもよ」
「え?」
「人って、変化する前に必ずザワつくんだよ。それは悪いことじゃなくて、成長の前兆なの」
その言葉に、ハッとしました。
不安は、悪いものじゃなかった。それは、次のステージが近づいているサインだったんです。
それから、私は不安を「敵」としてではなく、「変化のメッセージ」として受け取るようになりました。そして、不思議なことに、そう思えるようになってから、不安が怖くなくなったんです。
💡 気づき:感情は「変化のセンサー」
振り返ってみると、私はずっと「不安=悪いもの」だと思っていました。
不安は取り除くべきもの。消すべきもの。あってはいけないもの。だから、不安を感じる自分を、弱いと思っていたんです。
でも、ある日気づきました。
感情は、「変化のセンサー」だった。
体温計が熱を感知するように、感情は心の状態を感知する。そして、不安という感情は、「今、何かが変わろうとしているよ」というセンサーが反応している状態だったんです。
たとえば、新しい仕事を始める前、不安になる。でも、それは「準備不足」だからじゃない。「未知のこと」に挑戦しようとしているから。つまり、成長しようとしているから。
引っ越しの前、ソワソワする。でも、それは「間違った選択」をしたからじゃない。「環境が変わる」ことに、心が反応しているから。つまり、新しいステージに進もうとしているから。
人間関係が変化するとき、心がザワつく。でも、それは「何か悪いこと」が起きているからじゃない。「関係性が深まる」あるいは「距離が変わる」という変化に、心が気づいているから。
そして、もう一つ気づいたこと。
理由がわからない不安は、「まだ言葉にならない変化」を感じている。
意識ではまだ気づいていない。でも、無意識は気づいている。「何かが変わろうとしている」と。だから、理由もなく心がザワつく。それは、変化の予感なんです。
自己啓発本には、「不安を取り除こう」と書いてある。でも本当に必要だったのは、「不安を変化のサインとして受け取ること」だったんです。
🧠 心理学的解説:心理的移行期とニューロプラスティシティ
「不安は成長のサイン」というのは、感覚的な話だけではありません。心理学や脳科学でも、しっかりとした根拠があるんです。
まず、発達心理学では「心理的移行期(psychological transition)」という概念があります。
これは、人生の一つのステージから次のステージへ移行するときに経験する、心理的な不安定期。アメリカの心理学者ウィリアム・ブリッジズは、この移行期を3つの段階に分けました。
①終わり(Ending):古いステージが終わる。喪失感や不安を感じる。
②中立圏(Neutral Zone):古いものと新しいものの間。最も不安定で、ザワつく時期。
③新しい始まり(New Beginning):新しいステージが始まる。
私たちが感じる「理由のない不安」は、多くの場合、この「中立圏」にいるときのサイン。古いものはもう合わなくなっているけれど、新しいものはまだ見えていない。その間の、宙ぶらりんな状態。それが、心のザワつきとして現れるんです。
次に、脳科学の「ニューロプラスティシティ(神経可塑性)」という概念。
これは、脳が変化し、再構築される能力のこと。新しいことを学んだり、環境が変わったりするとき、脳の神経回路が組み替えられる。
そして、この組み替えの過程で、一時的に不安定になることがわかっています。なぜなら、古い回路を壊して、新しい回路を作っているから。その「工事中」の期間、心はザワつく。
つまり、不安を感じているときは、脳が成長しているときなんです。
また、心理学者のミハイ・チクセントミハイが提唱した「フロー理論」では、成長には「適度な挑戦」が必要だとされています。
簡単すぎると退屈する。難しすぎると不安になる。でも、「少しだけ難しい」ちょうどいいレベルの挑戦が、フロー状態(没頭状態)を生み、成長につながる。
そして、そのちょうどいいレベルにいるとき、私たちは少しの不安を感じる。つまり、不安は、成長ゾーンにいる証拠なんです。
さらに、精神科医のカール・ユングは、「個性化(individuation)」という概念を提唱しました。これは、人が本当の自分になっていくプロセス。
そして、このプロセスの中で、必ず「混乱」や「不安」が訪れると述べています。なぜなら、古い自己イメージを手放して、新しい自己を受け入れる必要があるから。その移行期に、心はザワつく。
私自身、この理論を知ったとき、「だから今、不安なんだ」と納得しました。不安は、成長が止まったサインじゃなく、成長している最中のサインだったんです。
🌿 実践法:不安を「観察」する「マインドジャーナル」
では、心がザワついたとき、どうすればいいのか。私が実践して効果があった、「マインドジャーナル」の方法を4つのステップでお伝えします。
このジャーナルの目的は、不安を消すことじゃない。不安を観察して、そこから気づきを得ること。不安と戦うのではなく、不安から学ぶ。その姿勢が、不安を味方に変えてくれます。
🌤 ステップ①:「今、どんな感じ?」を書く
まず、今、心がどんな感じなのか、そのまま書く。
理由を探さない。分析しない。ただ、「今、こう感じている」という事実を書く。
私の実際のノート例: 「なんとなく、心がざわざわしている」
「理由はわからないけど、落ち着かない」
「ソワソワして、じっとしていられない感じ」
「何かが起こりそうな予感がある」
この「そのまま書く」ことが、実は一番大事。感情を否定せず、ありのままを認める。それが、感情を整理する第一歩になります。
マインドフルネス心理学では、これを「観察的気づき(observing awareness)」と呼びます。感情を「良い・悪い」で判断せず、ただ「ある」と認識すること。その客観性が、感情との距離を作ってくれるんです。
私の失敗例: 最初、「不安を感じている。これは良くない。なんとかしなきゃ」と書いていました。でも、これは観察じゃなく、判断。今は、「不安を感じている」という事実だけを書くようにしています。
🌿 ステップ②:「もしこれが、変化のサインだとしたら?」と問いかける
次に、「もしこの不安が、変化のサインだとしたら、何が変わろうとしているんだろう?」と自分に問いかける。
答えはすぐに出なくてもいい。ただ、この問いを持つことで、視点が変わります。
例: 「もしこれが変化のサインだとしたら…」
→ 「今の仕事に、何か違和感を感じているのかも」
→ 「人間関係で、距離感が変わろうとしているのかも」
→ 「自分の価値観が、変わり始めているのかも」
この問いかけによって、不安が「敵」から「メッセンジャー」に変わる。
不安は、何かを教えてくれようとしている。その視点で見ると、不安が怖くなくなります。
私の体験: ある時期、理由もなくソワソワしていました。そこで、「もしこれが変化のサインだとしたら?」と問いかけたら、「今の生活、充実しているけど、何か新しいことを始めたい気持ちがあるのかも」と気づいたんです。それがきっかけで、ブログを始めました。不安は、「次のステップに進むサイン」だったんです。
🌼 ステップ③:「体は何を感じている?」を確認する
次に、体の感覚に意識を向ける。
不安は、心だけでなく、体にも現れます。その体の感覚を観察することで、不安との付き合い方が変わります。
例: 「胸がざわざわしている」
「肩が緊張している」
「呼吸が浅くなっている」
「お腹のあたりがモヤモヤしている」
そして、その感覚に対して、「ああ、今、体がこう反応してるんだね」と認める。
身体心理学では、「体の感覚に気づくことで、感情が整理される」ことがわかっています。なぜなら、感情は体の反応として現れるから。その反応を認識することで、感情との距離ができるんです。
私の体験: 不安を感じたとき、体に意識を向けると、肩がすごく緊張していることに気づきました。そこで、深呼吸して、肩を回してみた。すると、少しだけ不安が和らいだんです。不安と戦うのではなく、体を労ることで、不安が落ち着く。そのことを学びました。
🌸 ステップ④:「この揺れを、味方にするには?」を考える
最後に、「この不安な感じを、味方にするには何ができる?」と問いかける。
不安を消そうとするのではなく、不安と一緒に進む方法を考える。
例: 「新しいことを少しずつ始めてみる」
「誰かに話を聞いてもらう」
「今は変化の時期だと認めて、焦らない」
「休息を増やして、心の余裕を作る」
この問いによって、不安が「問題」から「きっかけ」に変わる。
不安があるから、新しい行動を起こせる。不安があるから、自分を見つめ直せる。その視点が、不安を成長の力に変えてくれるんです。
私の体験: 「この不安を味方にするには?」と考えたとき、「今は変化の時期だから、無理しない」と決めました。そして、意識的に休む時間を増やしました。すると、不安は消えなかったけれど、「不安と一緒にいる」ことができるようになったんです。不安を敵視しなくなったら、不安も攻撃してこなくなった。そんな感覚でした。
🌈 まとめ:揺れは進化の証拠
以前の私は、心がザワつくと、「何か悪いことが起きているんじゃないか」と恐れていました。
不安は、取り除くべきもの。消すべきもの。だから、不安を感じる自分を、ダメだと思っていたんです。
でも今はわかります。
揺れは、進化の証拠。
種が脱皮するときも、蝶が羽化するときも、一時的に弱くなる。でも、その弱さは、次のステージに進むための必要なプロセス。人間も同じ。心が揺れるのは、次のステージが近いサイン。
不安は、敵じゃない。メッセンジャー。
「今、変わろうとしてるよ」「次のステージが近いよ」。そう教えてくれているんです。
自己啓発本には、「不安を取り除こう」「ポジティブに考えよう」と書いてある。でも本当に必要だったのは、「不安を成長のサインとして受け取ること」だったんです。
マインドジャーナルを始めてから、私は不安が怖くなくなりました。不安を感じたら、「ああ、何か変わろうとしているんだな」と思える。そして、その変化を楽しみに思えるようになったんです。
心がザワつく夜も、もう怖くない。それは、次のステージが近づいているサイン。揺れている今こそが、進化の瞬間なんです。
🌸 揺れを受け入れる余裕が成長を加速させる
40代になって、私は気づきました。
若い頃は、不安を「敵」だと思っていました。不安があると、「自分はまだ未熟だ」「もっと強くならなきゃ」と焦っていたんです。
でも、40代になった今、揺れを受け入れる余裕が、成長を加速させると気づきました。
若い頃は、「揺れない自分」を目指していた。でも、揺れないということは、変化していないということ。停滞しているということ。今は、「揺れている自分」を受け入れられる。その揺れが、成長している証拠だとわかるから。
心理学者のエリクソンは、中年期を「世代性(generativity)」の時期と呼びました。これは、新しいものを生み出す時期。でも、新しいものを生み出すには、古いものを手放す必要がある。その手放しの過程で、心は揺れる。
40代の私たちは、その揺れを恐れなくていい。むしろ、揺れを「成長の証」として受け入れられる。その余裕が、40代の強さだと思うんです。
私自身、40代になってから、不安との付き合い方が変わりました。若い頃は、不安を感じると「何とかしなきゃ」と焦っていた。でも今は、「ああ、今、変化してるんだな」と穏やかに受け止められる。
その穏やかさが、40代の成長だと思います。
🌿 続けるためのコツ
「マインドジャーナル」を続けるために、いくつかのコツをお伝えします。
1. 不安を「敵」ではなく「友人」として扱う
不安が来たら、「またあなたね。何を教えてくれるの?」と話しかける。敵として戦うのではなく、友人として対話する。その姿勢が、不安との関係を変えます。
2. 答えが出なくてもいい
マインドジャーナルの目的は、答えを出すことじゃない。ただ、不安を観察すること。答えは後からついてくる。焦らず、ゆっくり。
3. 「今は変化の時期」と認める
不安を感じたら、「今は変化の時期なんだな」と認める。その認識だけで、不安への見方が変わります。変化は悪いことじゃない。成長のプロセスだから。
4. 体を労わる
不安が強いときは、心だけでなく体も緊張しています。だから、意識的に体を休める。温かいお風呂、ストレッチ、深呼吸。体が楽になると、心も楽になります。
5. 過去の「揺れ」を振り返る
過去にも、心が揺れた時期があったはず。でも、今はその時期を乗り越えている。その事実を思い出すことで、「今回も大丈夫」という安心感が生まれます。
💫 今日の一歩
今夜、もし心がザワついたら、ノートを開いてみてください。
そして、3つのことを書いてみてください。
①今、どんな感じ?
(理由を探さず、ただ感じていることを)
②もしこれが、変化のサインだとしたら?
(何が変わろうとしているんだろう?)
③この揺れを、味方にするには?
(今、自分にできることは何だろう?)
それだけでいい。
不安を消そうとしなくていい。
ただ、観察する。
ただ、一緒にいる。
心がザワつくのは、次のステージが近いサイン。
揺れているあなたは、進化している。
不安を感じているあなたは、成長している。
その揺れを、恐れないでください。
次のステージは、もうすぐそこです。
今日も、自分の揺れを、優しく見守ってあげてください。
あなたは、ちゃんと前に進んでいます。
